荻野好弘
愛知県犬山市で2020年7月、心肺停止状態の80代男性に救急隊が救命処置をした際、救急車に載せていた自動体外式除細動器(AED)のバッテリー残量が不足し、電気ショックを継続できない事態が起きていたことが分かった。男性は搬送先の病院で死亡したが、消防側は「死亡との因果関係は認められなかった」として、バッテリー切れだったことを、当時遺族に説明していなかった。
犬山市消防本部の説明によると、20年7月、男性の妻からの119番通報を受けて市消防署北出張所から救急車が出動。救急救命士らが男性の自宅で心臓マッサージや人工呼吸をしながら、AEDで電気ショックを4回実施した。
継続して5回目を試みたが作動しなかった。予備バッテリーも充電できておらず、電気ショックを続けられなかった。AEDの心電図は電気ショックを継続すべき波形を示していたという。
救急隊はこうした状況を医師に連絡しながら、男性を救急車で搬送。妻に対し、電気ショックを継続できないと言ったものの、バッテリー切れとは説明しなかったという。
市消防本部は当時、救急隊の対応と男性の死亡との因果関係を検証したという。水野明雄・消防次長兼消防署長は4日、朝日新聞の取材に対し「搬送先の医師は電気ショックを継続していても蘇生できなかったと判断し、因果関係を否定した。搬送は早くしており問題ないと考えた」と答えた。当日朝に隊員がバッテリーを確認したが、残量を見誤ったとみられる。
今月、報道機関の取材を受けた消防本部は、男性の自宅に電話で連絡し、搬送時に不手際があったと伝えたが、それ以上の説明は不要と言われたという。(荻野好弘)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル